長年企業ではタブー視されていた「副業」も、ここ数年で見直されつつあります。
そもそも副業が禁止されていた背景とは何だったのでしょうか?
就業規則に掲げられている「副業禁止」には、下記のような否定的な理由がありました。
業務終了後、毎日深夜までバイトされたら、本業に集中できなくなるのも納得のお話です。
それでは、なぜいま国や企業が副業解禁の流れとなったのでしょうか?
なぜ副業解禁の流れが起きているのか?
厚生労働省は平成30年1月に「モデル就業規則」を提示しました。
その中では勤務時間外の副業・兼業 に関する規定が新設され、原則認める方針となっています。
(副業・兼業)
第67条 労働者は、勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる。
2 労働者は、前項の業務に従事するにあたっては、事前に、会社に所定の届出を行うものとする。
3 第1項の業務に従事することにより、次の各号のいずれかに該当する場合には、会社は、これを禁止又は制限することができる。
① 労務提供上の支障がある場合
② 企業秘密が漏洩する場合
③ 会社の名誉や信用を損なう行為や、信頼関係を破壊する行為がある場合
④ 競業により、企業の利益を害する場合
(本文では、これ以降に裁判例も記しながら、労使間の検討を促しています)
先に挙げた、本業がおろそかになる懸念を抱えたまま、副業を認めた背景は何なのでしょうか?
そんなところも、経営者の本音では否定できないかも知れませんね。
しかし本筋では、もっと大きな流れで働き方が変わろうとしています。
人は、成長する間には気にならなかった事柄が、成長が止まると一気に不安になるものです。
今の日本経済がそれを表しています。
毎年昇給があった時代はとっくに過去のものとなり、昇給どころかボーナスカットや賃金カットさえ珍しい話ではありません。
しかも大企業と言えど、倒産しないとは言い切れない時代です。
長年日本は、終身雇用の名のもとに、一つの企業で生涯を終えるのが当たり前で、ある意味それは美徳とさえ考えられていました。
それは、「我慢=美徳」の考えにもつながるところがあり、実際私もその呪縛から抜けきれていません。
一方欧米では、「パラレルキャリア」の考えが定着していました。
新卒を大量に雇用して企業戦士に育てる日本と、いろいろな企業でキャリアを重ねながら成長する文化の違いは広く知られています。
何れも長所・短所がありますが、グローバルで流動性が激しい時代には、長い時間をかけて社風を重んじる社員を育てるよりも、多角的思考で即戦力な人材の方が好まれる傾向があるのでしょう。
そして副業解禁もその流れに沿ったものと言えます。
社員は長時間労働禁止やAIの発展により自由な時間が増え、それを自己啓発や趣味だけでなく、違う収入に活かしたい人も増えるでしょう。
企業側も、これまで束縛していた環境を開放することにより、これまでにない発想や気付きから新たなイノベーションが起きる期待があります。
埋まらない会社と働き手の考えの溝
とはいえ、現状はまだまだ副業を容認する企業は少ないのが実態です。
「そもそも残業・休出続きで、副業などやる暇もない‥」といった実態はさておき、依然として副業禁止にしている企業が多いのはなぜでしょうか。
リクルートキャリアの情報によると、2018年9月の調査では、兼業・副業を容認・推進している企業は全体の28.8%にとどまっているそうです。
前回比よりは5.9ポイント上昇していますが、まだ多くの企業では明確に禁止しています。
これには、いろいろな理由が想像できますが、先に挙げた懸念材料が払拭されていない事の他に、大きな理由が挙げられます。
それは社員の転職リスクです。
下町ロケットの社長は番頭さんの退職願いに対し、気持ちよく送り出しました。
しかし、これはドラマでのお話。
気持では応援したくても、そんなに快く手放せないのが現実です。
特に新卒であらゆる教育を与えてきた人材には、短期間で多額の投資を行ってきています。ついこの前まで何も知らなかった学生に、教育期間中でも多額の給料を支払っているのです。
さすがに、それもキャリアアップの腰かけと考えられたら、経営者側もやってられないですよね。
それと言うのも、転職しないことを前提に考えていることに無理があるのでしょう。
教育期間中の新卒者に多額の報酬を払うこと自体が問題なのは至極もっともですが、直ぐに戦力になるワーカーとの給与バランスもありますので、そう簡単な話でもありません。
ともあれ企業では将来性を見越したポテンシャル採用や、即戦力としてのキャリア採用など、中途採用で優秀な人材を集める動きがあります。
これも時代を反映してのことですね。
いずれにしても働く側はキャリアアップを目指した副業を選びたいものです。